蛍光
蛍光(けいこう、fluorescence)は、ある物質が光や他の電磁波を吸収し、その後、低エネルギーの光(長い波長)を放出する現象です。
蛍光の基本メカニズム
蛍光の基本メカニズムは、以下のステップを経て進行します。
- 光の吸収:
- 物質が光を吸収すると、その光のエネルギーによって物質の中の電子が基底状態(最低エネルギー状態)から励起状態(高エネルギー状態)へと移動します。このとき、電子は特定のエネルギー準位(軌道)に跳ね上がります。このプロセスは非常に短時間で起こり、フェムト秒(10^-15秒)程度の時間スケールで進行します。
- 励起状態:
- 電子が高エネルギーの励起状態に達すると、物質全体のエネルギーレベルが一時的に上がります。しかし、この励起状態は不安定であり、電子はエネルギーを失って再び低エネルギーの基底状態に戻ろうとします。励起状態の電子は、エネルギーを失う過程でいくつかの経路をたどることがあります。この過程でエネルギーを失う方法には、非放射緩和(エネルギーを熱として放出する)や蛍光(光としてエネルギーを放出する)があります。
- 光の放出:
- 励起状態の電子が基底状態に戻る際、吸収した光エネルギーの一部を光として放出します。この放出された光が蛍光です。重要な点は、放出される光のエネルギー(波長)は吸収された光のエネルギーよりも低く(波長は長く)なるということです。この現象はエネルギー保存の法則に従い、吸収された光の一部が非放射緩和によって失われるためです。放出される光の波長が吸収された光の波長よりも長くなる現象は「ストークスシフト」と呼ばれます。
蛍光の特性
- ストークスシフト:
- ストークスシフトは、吸収された光の波長と放出される蛍光の波長の差のことを指します。ストークスシフトの大きさは、蛍光物質の特性によって異なります。ストークスシフトが大きい物質は、吸収と放出の波長が大きく異なるため、蛍光観察や分析において有利です。
- 寿命:
- 蛍光寿命とは、電子が励起状態から基底状態に戻る際に光を放出するまでの時間を指します。この時間は、物質の種類や環境条件によって異なります。蛍光寿命は通常、ナノ秒(10^-9秒)からマイクロ秒(10^-6秒)の範囲にあります。蛍光寿命の測定は、物質の特性を評価するための重要な手段であり、特に生体分子や材料の研究において広く利用されています。蛍光寿命が長い物質は、長時間にわたって蛍光を観察できるため、特定の応用において有利です。